殺処分されうる猫の「無視できない割合」が、かつての飼い主からの引き取り。
年間、多くの尊い命が、様々な理由により殺処分されています。その対象となる動物たちの多くは、私たち人間が飼育していた、あるいは管理すべきだった存在です。中でも猫においては、殺処分されうる個体のうち、ある程度まとまった割合が「飼い主からの引き取り」であるという現実があります。
環境省の統計によると、自治体の動物愛護センターなどに引き取られる猫のうち、所有者不明の個体に加えて、飼い主から手放される猫が毎年一定数存在します。年度によってその割合は変動しますが、統計データからは、殺処分される可能性のある猫の中に、かつては愛情を注がれていたはずの「飼い猫」が無視できない割合で含まれている実態が浮かび上がります。
なぜ、一度は家族として迎え入れられた猫が、飼い主によって手放されてしまうのでしょうか。その背景には、様々な理由があります。
- 飼育環境の変化: 引越し、高齢化、飼い主の病気や死亡など、やむを得ない事情。
- 多頭飼育の崩壊: 適切な管理が難しくなり、猫が増えすぎてしまうケース。
- 経済的困窮: 飼育にかかる費用を捻出できなくなる。
- 問題行動: 猫の鳴き声、排泄の問題、家具へのいたずらなどが理由となる。
- 「思っていたのと違った」: 猫を飼うことへの理解や覚悟が足りないまま迎え入れてしまう。
特に問題視されるのは、最後の「思っていたのと違った」という、安易な気持ちで飼い始めてしまうケースです。猫を飼うということは、その一生涯にわたって命に責任を持つということです。食事や健康管理はもちろん、日々の世話、医療費、そして万が一の時の対応まで、長期にわたるコミットメントが求められます。この覚悟がないまま迎え入れられた猫は、飼い主の都合によって容易に見放され、行き場をなくしてしまう可能性が高まります。
飼い主からの引き取りが多いことは、動物愛護センターの負担を増大させるだけでなく、本来であれば温かい家庭で過ごせたはずの命が、再び厳しい現実に晒されることを意味します。限られたスペースと人員の中で、すべての引き取り動物に新たな飼い主を見つけることは容易ではなく、残念ながら殺処分という選択をせざるを得ない状況が生まれてしまいます。
この状況を改善し、一匹でも多くの猫の命を救うためには、私たち一人ひとりの意識改革と行動が必要です。
- 終生飼養の徹底: 猫を飼う際には、その一生涯に責任を持つ覚悟が必要です。安易な衝動買いは避け、自身のライフスタイルや環境が猫との共生に適しているか十分に検討しましょう。
- 不妊・去勢手術の実施: 望まない繁殖を防ぐことは、不幸な命を増やさないための最も基本的かつ重要な取り組みです。
- 問題行動への理解と対応: 猫の問題行動の多くは、原因を探り、適切な方法で対応することで改善が見込めます。専門家や自治体の相談窓口に相談することも有効です。
- 保護猫という選択肢: 新たに猫を迎え入れる際には、保護猫を迎えることを検討してみてください。多くの保護団体や動物愛護センターが、新たな家族との出会いを待つ猫たちの情報を提供しています。
- 地域社会の取り組み: 飼い主のいない猫への不妊・去勢手術の推進や、地域全体で猫を見守る活動なども重要です。
殺処分されうる猫の中に、かつての飼い猫が含まれているという事実は、私たち人間に突きつけられた重い課題です。命を迎えることの尊さと責任を改めて認識し、すべての猫が安心して暮らせる社会を目指していくことが、今求められています。

私たちは名古屋市の保護猫組織「ねころび」です。日本中の犬猫殺処分ゼロを目指し、主に不幸な野良猫を減らすための避妊去勢手術、恵まれない立場の動物の保護を行うために活動しています。